スカイファイターエフ 『鷹戦士Ｆ』立ち読み To 立読みTOP 第１章　白い悪魔 White DEVIL 　それからの彼は狩りで修行をした。 　朝も夜も、絶えず枝や石を握りしめてはつぶし、木や石を獲物に見立てて飛びかかる練習も毎日やった。技術を磨いた。自分と同じ年齢の幼鳥が親からエサをもらっているのを見るとバカにみえる。 （弱いものを相手にしていたら自分が弱くなる。俺は強い、この先何処まで強くなるか分からないほど強いんだ。もっと強くなるぞ！） 　Ｆはこうして五ヶ月目にはもう普通の成鳥と同じほどの狩りの技量を持つようになっていた。 　カンムリクマタカは幼鳥と成鳥では別の鳥のように色が違う。純白の羽毛と黒い翼の若き白鷹はアフリカの大空を何処までも高く飛ぶ。 　ただ訳もなく、高く飛ぶことに挑戦するように、Ｆは羽ばたいた。そして高く飛ぶには気流を使うことが有効だと言うことを学ぶ。 　その上昇気流を利用し円を描きながら上がっていく。 　そんな彼を、回りは大人と見なし、殺気を漂わせ一羽のカンムリクマタカがやってきた。縄張り争い、これは鷹なら必ず体験する避けて通れない道だ。悠然と飛ぶＦに大人のカンムリクマタカが威嚇音を発する。 　Ｆがにらみ返す。相手はＦがまだ子供と見るや蹴りかかってきた。Ｆはもろに蹴りを食らってよろめく。そこを更に追い打ちをかけるようにもう一発蹴られた。 　大人のカンムリクマタカの蹴りはこうも強いのか。 　Ｆは必死で落ちないように舞い上がった。 （この野郎！ゆるさねえ） 　Ｆは相手を、空を飛ぶヤマネコと認識した。 　大きな爪はそれ以上に強大な武器だ。 　Ｆは急浮上すると、一気に急降下に転じた。 　相手は楽に交わす。飛行術だけをみれば所詮は巣立って間もないレベル。Ｆが接近しようとしても相手は楽に交わしきる。 　今まで彼は武器を磨き、狩りの技術を向上させることのみに修行してきた。空中戦においてはキャリアが全くない。自在に飛ぶ相手は急接近して離れる瞬間に蹴るのだ。 「ここが俺の縄張りである以上、お前は殺されても仕方ねえんだぜ。今日の俺のエサになるか、シッポを巻いて逃げるか、選べ」 　しかしＦは逃げなかった。 　相手はそのしつこさに嫌気がさしたように追い打ちをかけて攻撃を繰り返す。早く行けとばかりに。 　白い体は血だらけになった。 （縄張り、ここはあいつの領という訳か。俺には領がないということなのか、ヘッ。スカイファイターＦの初試合と言うことか） 　Ｆはまだ人間に直せば１３歳、とても大人に勝てる年齢ではない。 　そして相手もその白い姿を見ればすぐに分かる。 　しかし手加減はしない。 　厳しい生存競争の中では自分がよりよいエサ場を確保するために相手を追い払うのだ。 　何度も何度も蹴られながら、Ｆの中で矛盾が生まれた。 （縄張り？ふざけるな！俺は行きたいところに行き、飛びたいところを飛ぶ！狩りたい獲物を狩る！てめえの指図は受けない！） 　相手はこの縄張りを幾多の敵を退けて奪った王なのだ。 　弱いはずがない。 　しかしＦには、王という地位さえも無意味なのだ。 　王であるより、最強でありたい…Ｆ心の中で誓った。そして、相手を倒すたった一つの手段を見つけた。 （武器の威力だけなら負けねえぞ） 　幼少から鍛え抜いた脚と爪はすでに彼は爪豪（爪の威力が秀でた鷹）の力量を持っていた。 　相手がまた向かってくる。Ｆは向き合って一騎打ちに出た。誰も経験しない、虐げられた地位からのし上がってきたＦのプライドはこの攻撃で逃げることこそ真の恥と受け取った。雑草のように生き抜いたから強くなる事への執念は誰にも負けない。 　殺気がみなぎった。 　両者の距離がどんどん狭まり、Ｆは相手と同時に脚を出した。歩き続けてきたＦの長い脚が先に相手の体をがっしりと諸に掴んだ。 （今だ！） 　爪豪Ｆは容赦なく締め上げた。 　相手は脚を空回りさせて絶叫する。常に生と死の狭間で戦ってきたＦは、勝利に対する執念で一気に絞め殺した。 　血だらけのＦが夕陽をはじきながら叫ぶ。 　この時、伝説の幕が切って落とされた。