| スカイファイターエフ 『鷹戦士Ｆ』立ち読み |
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| 第４章 戦争の鷲 Martial eagle （俺が憎しみ続けていた親の仇が、俺の手ではなくライオンの手によって殺された…） そのときＦが 「ギルス、お前は鷲戦士のクズだ」 「なにい……！」 「傷を治せ、七日後に再びこの空で勝負だ」 怒りを通り越した目でギルスを睨み付け、Ｆは東の空へと去っていった。 「おい、待てＦ！ 俺ももうしばらくお前について行くぜ」 スカッドはギルスではなくＦを追った。 バオバブの木の左右の枝に分かれて留まったＦとスカッド。 あたりは何処までも続く平原。遠くで鳴り響く銃声を、Ｆとスカッドは耳にしながら夜を過ごす。 「お前は鷲戦士のクズだ……どういう意味だ。このサバンナであいつに憧れないスカイファイターはいない！ 取り消せ！」 「クズだ」 「何や、お前ムカつく事を言う奴だな。ギルスはアフリカの英雄だ！ 俺たちの憧れだ！ それをクズ呼ばわりする気か。ハイエナへの憎しみをバネに、ハイエナ殺しという誰にもまねできないことをやり遂げてあの力を身につけたんだ。あいつは鷲戦士の神だ！ お前みたいな駆け出しの若僧とは訳が違う！」 スカッドが食いかかる。 「お前に何をいっても無駄だ」 「勝てるものか！ まあいい、お前にしばらく付き合わせて貰うぜ」 スカッドは羽を膨らまし、まん丸になって息を荒げたままＦを睨み付けていた。 そしてＦの訓練が始まった。水平飛行におけるスピードにスカッドは度肝を抜いた。 「ハヤブサだ……カンムリクマタカはこんなにも速いのか」 Ｆはただひたすら飛び続ける。 急浮上と急降下。獲物を捕る実戦式の訓練は全くしない。ただ、いつまでやるんだというくらい飛び続けた。そしてサバンナは赤い色を帯び、夕陽の中をＦはいつまでも跳び続ける。 そんな日が三日間も続いた。 「あいつメシも食わないのか……」 気が付けば夜。スカッドはただあっけにとられ、 「おい、俺が取ったマーモットをちっと食ってみないか。四日間も何も食ってないだろう。体に毒だぜ」 木の枝には食いかけの獲物がぶら下がっている。 「俺に構うな」 そしてＦは目を閉じ睡眠に入った。 「ケッ、偏屈な奴だ」 スカッドは押し黙ってＦの寝顔をじっと見ていた。 四日目、Ｆは夜が明け切ったばかりの青いサバンナへ飛び立った。 スカッドは磁石のようにＦの行動に引っ張られた。気になって仕方がないのだ。飢えた目で原野を睨み付けながら、孤立したハイエナを見つけるや稲妻の急降下で襲いかかった。 「おまえ、お前には無理だ！」  叫ぶスカッドの声も聞かずＦはハイエナの首に体当たりして爪を突き刺す。大暴れするハイエナにＦは振り回される。しかし懸命に羽ばたきなから、怪力で一気に首を締め上げた。 スカッドはその戦いを見続けた。 ブチブチと首の筋が切れ、ハイエナはコトリと座り込んで二度と立ち上がらなかった。Ｆは四日ぶりの獲物を口にした。 ギルスとは明らかに戦い方が違う。 ギルスは怪力で羽ばたき、押さえつけながら爪を打ち込みまくるのに対しＦは首のたった一カ所だ。体力は明らかにギルスだが、爪の力はＦが上かも知れないとスカッドは恐怖に震えた。 どちらが勝つか、しかし前の戦いでは明らかにギルスが有利だった。スカッドは二人の戦いが待ち遠しくなり、いつしか眠れぬ夜を過ごす。 そしてそんな夜。 また、遠くの街で、銃声が響き戦車が地雷を踏み爆音がこだまする。 「Ｆよお、人間はいつまで愚かな戦いを繰り返すんだろうな」 「永遠に続くだろうよ。あいつらが憎しみで動く生き物である限りな」 「憎しみで動く……」 一方のギルスはグランという追い続けた親の仇がライオンの手によって食い殺され、心に風穴が空いていた。 もう、ハイエナを殺すことでしかその風穴を埋めることは出来ない。ギルスはガゼルやインパラといった草食獣達から英雄のごとく崇められた。 しかしそれは薄っぺらいものでしかなく、自分を天敵から守って貰おうという狙いでのものでしかないことはギルスにも分かっていた。 そしてこの日以来ハイエナを見ると殺すという衝動は以前にも増して激しくなっていた。何の躊躇もなくハイエナを殺す。 彼はこの一週間の間に一七頭ものハイエナを殺し、Ｆとのアフリカ最強を懸けた戦いに挑む。 その日は夜のうちに大雨が降りしきり、朝になっても重たい雲は空に立ちこめて動かない。遠くの空では戦争が本格化し、銃声は爆音にかき消され大地は揺れ動き、シマウマやヌーの群れが危機感を背中に遠い草原へ地響きを立てて走り出す。 西の空からギルスが殺気を引き連れて不気味に飛んできた。 行き場のない憎しみを引き連れて。 どちらが命を落としても文句なしの世界、それがスカイファイター。Ｆに同行してきたスカッドが願うことはただ一つ、どちらも助かって欲しい、ただそれだけだった。 |
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