第4章 戦争の鷲
Martial eagle
ギルスは、あのダンよりも殺気が漂い、俺に敵はいないという自信と凄まじい殺気でFに威圧をかけて笑う。
ギルスはたくましく飛ぶ。空中戦では爪以上に飛行術が優劣を左右する。Fが詰め寄ろうとすると大きく旋回して交わした。うまい。
近づけてさえくれない。そして実はそうしながら円を描き上昇気流を使って高いポジションに上がっていたのだ。
そして稲妻のような急降下が始まった。
速い。
Fはやむなく直線飛行で加速して迎え撃つ。両雄がぶつかり互いの胸を蹴る。その衝撃でFは飛ばされる。ギルスは体力がある。身体全体の漲るパワーはF以上だ。その背後にはハイエナのパワーが乗り移っていた。異常な力だ。
(俺より力がある、初めてだぜ)
力負けしたことのないFは逆に闘志が沸いた。今までスカイファイターとして大空に飛び立って以来、負けたことはない。
負けるかも知れない。
負けたくない。
Fが再び急カーブしてギルスを掴もうと爪を剥き出したとき、ギルスの猛烈な羽ばたきがFをはじき飛ばした。
強い!そのとき強風に煽られFは空中を流される。降下して低空飛行していくギルスに地上のハイエナの群れが映った。そしてギルスの目が変わる。
{グラン…!}
優位に戦いを進めていたギルスが急に向きを変えた。
「お前との勝負はお預けだ!」
「なにい!」
憤ったFはギルスが向かう方向を睨んだ。
(ハイエナ…!)
「グラン、見つけたぞ!」
ギルスは闇雲にハイエナの群れ目がけ急降下するとその一頭を蹴った。
「貴様らあ、仇だ、許さねえ!」
「ギルスやめろ!死ぬ気か!」
スカッドが止めようとしたがギルスに飛ばされた。一頭でさえ手強いハイエナが五頭もいる。グランの顔が引き裂かれた。
「俺を覚えているか、貴様らに親を殺されたギルスだ!二年ぶりだ!」
グランはその日のことを思い出した。
「ギルス……ハイエナ殺し、アフリカ最強のスカイファイター一族の末裔かい……」
「そうだ! 俺の目の前にハイエナが立ちはだかる限り、俺は殺し続ける!」
そのとき黒い稲妻がギルスを蹴り飛ばした。
「ふざけるなギルス!」
Fの怒り狂った叫びもギルスには届かない。
そのとき、茂みを割って一頭のオスライオンと二頭のメスライオンが現れた。
「ライオンだ!」
グランが群れの仲間に警報をあげる。
こうなるとさすがのFとギルスもうかつに近づけない。動きの軽いメスライオンの方が厄介なのだ。ライオンとハイエナの対決が始まった。ギルスとFはじっと地上を視察する。
ライオンとハイエナは敵対関係にあり、獲物の奪い合いでなくともたまに殺し合うことさえある。グランは自ら先頭に立ってライオンに襲いかかった。骨をもかみ砕くハイエナのアゴはライオンにとっても恐怖だ。
オスライオンは逃げた。仲間が一斉に襲いかかる。しかしメスライオンの応援が激しく仲間の一頭が殴り飛ばされた。
(このままでは皆殺しにされるかも知れない!)
グランは力を振り絞ってオスライオンの首に飛び込み噛みついた。オスライオンを失えばハーレムが崩れる。メスライオン二頭が慌ててグランに噛みついた。
「お前ら今のうちに逃げろ!」
「ボス!」
「アタシたちの未来のためだ! 逃げて生き延びるんだ! ガルマ、後はお前に任せた!」
ガルマは仲間を逃げるように吠え立てた。そして気を引きつけようとグランは懸命に抵抗し、オスライオンの首を噛みしめる。オスライオンが唸りを上げてグランを殴り飛ばし、首から血を流しながらも押さえつけた。 グランは最期の力を振り絞って立ち上がろうとしたがオスライオンに首をかまれ大きく振り回された。
(ガルマ、後は頼む…!)
骨を砕かれ、投げ飛ばされ、グランは激痛に気を失い息絶えた。
ギルスは呆然とその姿を見ていた。
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