スカイファイターエフ
『鷹戦士F』立ち読み
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第4章 戦争の鷲
Martial eagle



 一方、Fはギルスを探しサバンナを彷徨っていた。ここで一番よく会うワシがソウゲンワシだ。Fは相手の力量を計るべく接近して旋回した。相手は会わせてスピードを上げた。
巧みな緩急でFに錯覚さえ誘う。
(並の動き方じゃねえ。鷲戦士だな)
 二羽の距離が少しずつ縮まり、二羽は上空1000mの焼けつく太陽の下で蹴り合った。ソウゲンワシはその一撃で叫ぶ。
「参った!お前の勝ちだ!」
 Fはそのあとを続けようとはしない。すぐに先を急ぐFにワシはバタバタ羽ばたいて加速しながら、その後を追いかける、
「まあ待て、若いの。俺は鷹戦士と語るのが好きだ。そこの木に止まらないか、いや、飛びながらでもいいぜ、俺の名はスカッドだ」
 Fは相づちも打たずただ跳び続ける。
「お前はかなりの力を持っているな。久しぶりにゾクゾクしたぜ。カンムリクマタカだな?」
「ああ」
「見えないな。白い顔、異様に長い足、もしかして白い悪魔と言われたFかい」
「そうだ」
「もう白くはないな、黒い悪魔と周りも呼び始める時期だろう」
 大きな気流を探して上昇し、ついに二羽はその気流に乗った。ここからは体力を使わずに長距離を滑空出来る。
 大地は灼熱の地獄、しかしその上をまたぐ彼らの上空は、強い風で涼しい。
「ジャンゴーもビッグサバンナもお前に負けたらしいな。俺もソウゲンワシの間では負けたことがないんだぜ。ゴマバラワシにも一度だけ勝ったことがある。まあ、お前にしてみれば俺なんて大した相手じゃないがな、俺にもプライドはあるんだぜ」
 Fの行動には無駄がない。飛びながらもスカッドの話は聞いていた。
「俺は世界最強にはなれない、強い奴を相手に何度も負けた。だが、スカイファイターをやめられなくてな。負けることで自分を高めていける。一番大切なのは、自分に勝つことだぜ。相手に負けても自分に勝てば納得できる」
 Fはふと、允を思い出した。
「お前も早いとこ負けろ、そうしないと本当に強くなれないぜ」
 Fはこのときギロリとスカッドを睨んだ。
「ギルスを探しているんじゃあねえのかい?」
「知っているのか」
「お前が求める相手と言えばこのアフリカにはギルスしかいまい」
「何処にいる」
「つい昨日、あいつの狩りを見たよ。ハイエナ殺しのギルス、あのパワーはカンムリクマタカにはないからな。あいつこそアフリカ最強だ。お前より強いぜ。あいつには悲しい過去がある。ハイエナ殺しの異名の裏には、ハイエナに両親を食い殺された恨みがあるのよ」
 またFがスカッドを睨んだ。ハイエナ殺し、ただ者ではない。
「カンムリクマタカ最強のジャンゴーが唯一負けた相手もギルスだった。ジャンゴーは技で立ち向かったがギルスの急降下の一撃にノックアウトされたよ。ダンってジンバブエじゃ有名なスカイファイターは三度戦って一度も勝てなかった」
「ダン…!」
「知ってるのかい。南部の奴を。ゴマバラワシはカンムリクマタカより強い、そしてギルスはお前より遙かに強いぜ」
 スカッドはFの心をあおり立て、不気味に笑った。
「そこまで男が言い切った以上、ギルスと会わせて貰うぜ」
「いいだろう、人のケンカを見るのも、俺の楽しみだ」
 興奮しながら話すスカッド、面白い男だと思った。彼は自分が強いかという以前に戦いというものを楽しんでいるのだと。允と似ている部分を感じるが、彼はもっと、良くも悪くも自分の力に見切りをつけているようだ。しかしそれが逆に彼の視野を広くし、戦いに生きる人生が楽しそうにさえ見える。
「ただギルスも鷲戦士だからな。今日も明日も旅の空だ。いつ何処で逢えるか分からないぞ」
「見つけ出してやるさ」
「そうだな、相手もお前を捜しているだろうし、いつかばったり出くわすだろう。俺とあいつは昔ながらの友達だ。つもる話もあるしな。久しぶりにあいつと木の上で語り明かしたいものだ。お前と戦って、勝ったギルスを祝ってな」

 孤立した大きなハイエナがシマウマを追いかける。アフリカではよく見る風景だ。遠くで響く銃声や空爆さえも、シマウマ達の土砂降りの雨のような足音でかき消される。ハイエナは年寄りか、子供のシマウマを襲う。そして、ターゲットは子シマウマだ。
 その時、上空からハイエナを襲う巨大な影が子シマウマの上を通り過ぎた。
 ギルスだ。ライオンをも包み込むほどに大きな翼に覆われ、ハイエナが空を見たとき、ギルスはその背中を蹴り飛ばすように鷲掴みにしていた。ギルスの目は鬼になっていた。残虐の悪魔にも似た殺気でハイエナの脊髄を握りつぶして羽ばたきながら、後ろを向いた顔にクチバシで応戦する。シマウマ達はおびえながらギルスをじっと見ている。ハイエナはヒョウに勝る肉食獣でその力は凄まじい。ギルスの爪は深く刺さって抜けない。激痛に耐えながらハイエナは腹這いになってギルスを押しつぶそうとした。ギルスは怪力で持ち上げるように脚を伸ばし圧死を防いだ。そしてギルスは勝った。
 ギルスはハイエナの上に立ち、シマウマ達に視線を投げやり、大空を見上げたとき、巨大な殺気の稲妻を目に受けた。紛れもなく、F。
「あれがギルスだ!このアフリカで最強のワシだ!」
 スカッドが体を震わせて叫ぶ。
 Fは殺気を迸らせ急降下する。戦意のみなぎる威嚇にギルスは煽られ、凄い風圧で急浮上してきた。Fは素早くその一撃を交わした。
「ギルスか」
「お前はFだな」




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