スカイファイターエフ
『鷹戦士F』立ち読み
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第三章 真昼の誓い
An oath of high noon


(よし、俺は右の男をやる!)
 Fの猛スピードに横にいたサイチョウが騒ぎ、それがダニエルを気づかせる。
「なんだあらあっ!」
 ダニエルは素早く銃を取り伏せる。Fは、ダニエルともう一人のハンターの間をすれすれに飛び、ダニエルのほうが間に合わないと見るや、横の男の首を掻き切る。
「ウオアーッ!」
 男は首から血を吹き出して倒れ、Fの後から矢継ぎ早に允が慌てふためく男の首を蹴る。
「うわーっ!助けてくれーっ!いてえよお!」
「ビービー騒ぐんじゃねえっ!撃っちまえばいいんだっ!」
 ダニエルは銃をその允の後ろ姿めがけて撃つが木に当たる。
「F、あのボスかなりの早撃ちだぜ!あんな早撃ち見たことねえ!」
「殺す!」
 允とFは互いに目で合図すると、分かれて逆方向からハンターを襲う。木々の梢を切り裂き、二羽の陰が再びハンターを襲ったときダニエルは何と手に二本の拳銃をもって撃つ。
(何いっ!)
 そう思った次の瞬間、Fの風切り羽が銃弾に飛ばされ、允はその銃弾を体に食らう。
「允っ!」
允は最後の執念でもう一人のハンターの首を握りしめた。Fはそのまま茂みに消える。
「助けてくれダニエルっ!」
 ハンターの首にくらいついた允の胸からはおびただしい血が噴き出る。それは彼の最後の戦いであった。ダニエルは允も仲間も見境なく撃ちまくって止めをさす。
「悪いが、俺にまでこいつが向かって来たら、ちと邪魔になるんでな。それに金も独り占めできるしな」
「ひ、ひでえよお」
 男はその言葉を残して死んだ。ダニエルは二丁の銃を構え辺りをにらみ回す。
「ゆるさねぞ、貴様!」
Fが最後に選んだ手段はただ一つであった。彼は天に吸い込まれるように急浮上する。太陽の光が、その体を黒光りさせて反射する。
(俺が今まで戦ったハンターの中でも、最強の腕だぜ。貴様はなあ!)
 宇宙から落ちてくるかのようなFの急降下はこの時500kmを超える。
「上かっ!」
 ダニエルは二丁拳銃を空めがけて連射する。しかし上空から落ちてくるものに対しては、どんな射撃の名手でもまともに撃つことができない。Fの体は炎と化し、無数の銃弾を体に掠りながらもダニエルの首めがけて突進する。
(許さねえっ!)

 Fが体を反転させたとき、太陽の光線がダニエルの目をくらます。当たりは真っ白になり、次の瞬間、Fの爪はダニエルの動脈と神経を切断していた。ついにダニエルは倒れた。その首は骨ごとへしおれ、ダニエルは即死していた。Fは倒れた允の方へ飛ぶ。
「允…」
 允はその声に微かに目を開けて笑う。
「やったじゃねえかい、へっ…。お前と戦えねえで、それだけが残念だぜ」
 Fは静かに笑う。
「立派な戦いップリだったぜ」
「おめえは強いよ。信じられねえくらいにな。そんなに細い身体で、なんでこんなにまでも強いんだ。悔しいぜ。お前に会えて、よかったよ」
允は自分に残された時間が後どのぐらいか分かっていた。
「俺と戦うんだろう、しっかりしろ」
「へっ、世界にはまだ、強い奴がいるぜ。そいつ等を倒してくれ。俺の変わりにな。お前なら出来る。三強って言われてるサルクイワシや、そしてオウギワシがな。今度合うときは、地獄で決着をつけようぜ。F…」
「允、死ぬな…」
 允が最後の力を振り絞っていった言葉はこれだった。
「俺の…夢なんだよ、おまえはな。頼むぜ、F。…俺は、生き続ける」
允は目をカッと開けたままもう一度大空を眺めた。大空に吸い込まれるように。
「GOOD LUKE、允」
 Fは目を閉じた。
 夕陽が傾く頃、Fはダンの眠り続ける木にと戻ってくる。旅立ちの朝を誓ったあの木に。誰もいなくなったこの木に。「俺たちも行くか。このアフリカを出て、世界にな」
 Fはダンに語りかけた。
 允とダン、二人の戦友はFの心の中に永遠に生き続けるだろう。
 そしてFは羽ばたく。新しい戦いを求めて。

 ―允、俺も飛ぶよ。お前が飛べなかった分もな―





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